かつて,カメラは高価な商品だった。 高級なカメラは,「一生モノ」と言われていたものである。毎年のように新製品が登場し,翌年には型遅れ,数年後には見向きもされなくなり,10年もたたないうちにゴミと化す。そんな時代がやってくるとは,考えられなかったことだろう。最近のディジタルカメラと称する,パソコンの周辺機器である消耗電気製品は,その陳腐化がさらにスピードアップしている。これらはすべて,最新技術の結晶。それはそれですばらしい存在であり,道具としては最高の結果をもたらしてくれる(はず)。 しかし,なにかを忘れていないだろうか? 写真とは,被写体と向き合うことが重要である。カメラがフィルムに像を記録する時間はほんの一瞬だが,その瞬間に出会うまでに,さまざまなことを考え,準備する必要がある。もちろん,撮影対象によっては,最新の技術を利用しなければ撮影が難しいこともある。そんなときには,積極的に新しい機材を使えばよい。しかし,落ち着いて撮影をするべきときには,むしろ手間のかかる機材が望ましい。さまざまな設定をおこないながら,なにをどのように撮るべきか,画面内の被写体の構成をどうするべきか,じっくりと考えることもできるはずだ。
「クラシカルな機械には,暖かみがある。」
このように称して,クラシックカメラを高く評価する人もある。そのような一面があるのはたしかだし,それも重要な存在意義だ。しかし,カメラは,写真を撮らねば意味は激減する。クラシックカメラは,飾っておくだけではもったいない。ときどきでいいから,古いカメラを使ってみよう。忘れていた「なにか」を思い出すかもしれない。
このコーナーでは,当ミュージアムのカメラをカテゴリ別ではなく,年代別に並べ,そのうち1960年よりも前の製品を紹介する。つまり,以下のカメラはいずれも50年以上前に発売された製品ということになる(ロングセラーモデルの場合など,実質的には50年を経過していない製品も含まれる)。
▼アトム判(6cm×4.5cm)乾板あるいはシートフィルムを使う,小型クラップカメラ。1909年〜1926年ころにかけての製品。(第1展示室へ移動します。)
▼大名刺判(9cm×6.5cm)乾板を使うフォールディングカメラ。1919年ころの製品。(第1展示室へ移動します。)
▼ピント位置は固定,シャッター速度はTとI,絞りは4段階のみの簡素なスペックのフォールディングカメラ。1929年の製品。(第1展示室へ移動します。)
▼1930年代のベスト1/2判スプリングカメラ。1934年の製品。(第6展示室へ移動します。)
▼撮影レンズが目測式で,ビューレンズと連動しない,簡素な二眼レフ型のカメラ。1930年代後半の製品と思われる。(第1展示室へ移動します。)
▼クラップカメラとスプリングカメラの特徴をあわせもつようなスタイルのセミ判カメラ。1930年代後半の製品と思われる。(第1展示室へ移動します。)
▼カラートカセットを用いるカメラ。1937年〜1941年の製品。(第6展示室へ移動します。)
▼ボディにシャッターレリーズボタンが取りつけられるようになった,ドイツ製セミ判スプリングカメラ。1938年ころの製品。(第1展示室へ移動します。)
▼ミラーをシャッターに利用した,中判としてはたいへんコンパクトな一眼レフカメラ。1939年ころの製品。(第1展示室へ移動します。)
▼じつは,距離計連動ファインダーをもち,レンズ交換も可能なシステムカメラである。1939年〜1966年という長期間にわたって製造された製品だが,ここでは便宜上,もっとも普及したとされる1940年代の製品ということにする。(第4展示室へ移動します。)
▼アメリカのイーストマン・コダック社が,はじめて発売した35mm判カメラKODAK35に,連動距離計を搭載したカメラである。1940年〜1951年にかけての製品。(第3展示室へ移動します。)
▼ドナルドダックの絵が刻まれた127フィルム用のおもちゃカメラ。1944年ころの製品と思われる。(第5展示室へ移動します。)
▼回転式シャッターが組みこまれた扇型が印象的なハーフサイズカメラ。1945年ころの製品。(第5展示室へ移動します。)
▼616フィルム用の,少し大柄なボックスカメラ。1946年発売。(第6展示室へ移動します。)
▼フィルムの厚さの変化でスタート位置を自動的に検出する,オートマット機構を搭載。二眼レフカメラのスタイルや機能を完成させた。1945年〜1949年にかけての製品。(第1展示室へ移動します。)
▼キヤノンではじめて,ライカと同じレンズマウントを採用した。1949年発売。(第4展示室へ移動します。)
▼ボックスカメラとしては,最後期の製品。1950年発売。(第6展示室へ移動します。)
▼二眼レフカメラ以前に一般的だったスプリングカメラ。1950年ころの製品。(第1展示室へ移動します。)
▼ソ連でContax IIIをベースにつくられたとされるカメラ。1951年ころの製品。(第4展示室へ移動します。)
▼レンズにもシャッターにも1級品を採用した,35mm判スプリングカメラ。1951年〜1954年の製品。(第3展示室へ移動します。)
▼セミオートマットやセルフコッキングなどの高機能を誇る二眼レフカメラ。1952年発売。(第1展示室へ移動します。)
▼前玉回転式の廉価版二眼レフカメラを代表する機種の1つ。1953年発売。(第1展示室へ移動します。)
▼テッサー(45mm F2.8)が固定された,35mm判レンズシャッター式一眼レフカメラ。1953年発売。(第2展示室へ移動します。)
▼古典的なスタイル,機能の一眼レフカメラだが,最長12秒のシャッター,充実した交換ファインダーや交換レンズなど,高機能を誇る。1953年ころの製品。(第2展示室へ移動します。)
▼「繰出式,1秒付」で9500円。ヤシカフレックスAを上回るスペックで,二眼レフカメラに価格破壊をもたらした。1954年発売。(第1展示室へ移動します。)
▼廉価版二眼レフカメラの代表といえるリコーフレックスに,1秒〜1/500秒の高性能シャッターを搭載したモデル。1954年発売。(第1展示室へ移動します。)
▼左右対称のデザインが美しい,リアリスト判のステレオカメラ。1954年発売。(第6展示室へ移動します。)
▼マミヤシックス特有のバックフォーカス機構と大柄で堅牢なボディで,ピントはばっちり。日本が誇る世紀の大発明,マミヤシックスの廉価版。1954年発売。(第1展示室へ移動します。)
▼国産初の35mm判一眼レフカメラ「アサヒフレックス」の改良型。1954年ころの製品。(第2展示室へ移動します。)
▼繰り出し式,セミオートマットの,国産二眼レフカメラとしては標準的なスペックの製品。1955年発売。(第1展示室へ移動します。)
▼廉価版二眼レフカメラの価格破壊に,リコーフレックスは簡素なスペックとさらなる低価格で応戦。1955年発売。(第1展示室へ移動します。)
▼ソ連でつくられた,ライカを模倣したカメラ。1955年〜1958年ころの製品。(第4展示室へ移動します。)
▼ミラーをシャッターとして利用した,コンパクトな一眼レフカメラ。1957年ころの製品。(第2展示室へ移動します。)
▼レンズ部がすっぽりはずれてしまう,不思議なフランス製35mm判カメラ。1957年ころの製品。(第3展示室へ移動します。)
▼大きく明るいファインダー,露出計も内蔵。1958年ころの製品。(第3展示室へ移動します。)
▼ワイドカメラブームをつくったオリンパスワイドの改良型。1958年ころの製品。(第3展示室へ移動します。)
▼充実した交換レンズ群を誇る,レンズシャッター式一眼レフカメラ。1959年発売。(第2展示室へ移動します。)
▼連動距離計,ブライトフレーム入りファインダーの35mm判レンズシャッター式カメラ。1959年発売。(第3展示室へ移動します。)
▼マミヤ35S-II F2.8のレンズをF1.9にグレードアップ。ファインダーは,パララクス自動補正にも対応。1959年発売。(第3展示室へ移動します。)
▼この世に35mm判一眼レフは2種類ある。ニコン様とそれ以外だ。35mm判一眼レフは,ここに完成された。1959年発売。(第2展示室へ移動します。)
クラシックカメラは工芸品
かつて,カメラは高価な商品だった。
高級なカメラは,「一生モノ」と言われていたものである。毎年のように新製品が登場し,翌年には型遅れ,数年後には見向きもされなくなり,10年もたたないうちにゴミと化す。そんな時代がやってくるとは,考えられなかったことだろう。最近のディジタルカメラと称する,パソコンの周辺機器である消耗電気製品は,その陳腐化がさらにスピードアップしている。これらはすべて,最新技術の結晶。それはそれですばらしい存在であり,道具としては最高の結果をもたらしてくれる(はず)。
しかし,なにかを忘れていないだろうか?
写真とは,被写体と向き合うことが重要である。カメラがフィルムに像を記録する時間はほんの一瞬だが,その瞬間に出会うまでに,さまざまなことを考え,準備する必要がある。もちろん,撮影対象によっては,最新の技術を利用しなければ撮影が難しいこともある。そんなときには,積極的に新しい機材を使えばよい。しかし,落ち着いて撮影をするべきときには,むしろ手間のかかる機材が望ましい。さまざまな設定をおこないながら,なにをどのように撮るべきか,画面内の被写体の構成をどうするべきか,じっくりと考えることもできるはずだ。
「クラシカルな機械には,暖かみがある。」
このように称して,クラシックカメラを高く評価する人もある。そのような一面があるのはたしかだし,それも重要な存在意義だ。しかし,カメラは,写真を撮らねば意味は激減する。クラシックカメラは,飾っておくだけではもったいない。ときどきでいいから,古いカメラを使ってみよう。忘れていた「なにか」を思い出すかもしれない。
このコーナーでは,当ミュージアムのカメラをカテゴリ別ではなく,年代別に並べ,そのうち1960年よりも前の製品を紹介する。つまり,以下のカメラはいずれも50年以上前に発売された製品ということになる(ロングセラーモデルの場合など,実質的には50年を経過していない製品も含まれる)。
〜1910年代
ゲルツ ベストポケットテナックス
C.P.GOERZ Vest Pocket TENAX
▼アトム判(6cm×4.5cm)乾板あるいはシートフィルムを使う,小型クラップカメラ。1909年〜1926年ころにかけての製品。(第1展示室へ移動します。)
エルネマン ヘーグ0号
ERNEMANN HEAG0
▼大名刺判(9cm×6.5cm)乾板を使うフォールディングカメラ。1919年ころの製品。(第1展示室へ移動します。)
1920年代
No.1 ポケットコダックジュニア
No.1 Pocket Kodak Junior
▼ピント位置は固定,シャッター速度はTとI,絞りは4段階のみの簡素なスペックのフォールディングカメラ。1929年の製品。(第1展示室へ移動します。)
1930年代
六櫻社 ベビーパール
Rokuoh-sha BABY PEARL
▼1930年代のベスト1/2判スプリングカメラ。1934年の製品。(第6展示室へ移動します。)
ビタフレックス
KW Vitaflex
▼撮影レンズが目測式で,ビューレンズと連動しない,簡素な二眼レフ型のカメラ。1930年代後半の製品と思われる。(第1展示室へ移動します。)
コレレ(セミ判)
Korelle
▼クラップカメラとスプリングカメラの特徴をあわせもつようなスタイルのセミ判カメラ。1930年代後半の製品と思われる。(第1展示室へ移動します。)
アグフア カラート3.5
AGFA Karat3.5
▼カラートカセットを用いるカメラ。1937年〜1941年の製品。(第6展示室へ移動します。)
ウェルタ・ペルレ(セミ判)
Welta Perle
▼ボディにシャッターレリーズボタンが取りつけられるようになった,ドイツ製セミ判スプリングカメラ。1938年ころの製品。(第1展示室へ移動します。)
ピロート スーパー
KW PILOT SUPER
▼ミラーをシャッターに利用した,中判としてはたいへんコンパクトな一眼レフカメラ。1939年ころの製品。(第1展示室へ移動します。)
1940年代
アーガスC3
ARGUS C3
▼じつは,距離計連動ファインダーをもち,レンズ交換も可能なシステムカメラである。1939年〜1966年という長期間にわたって製造された製品だが,ここでは便宜上,もっとも普及したとされる1940年代の製品ということにする。(第4展示室へ移動します。)
コダック35RF
Kodak35 with Rangefinder camera
▼アメリカのイーストマン・コダック社が,はじめて発売した35mm判カメラKODAK35に,連動距離計を搭載したカメラである。1940年〜1951年にかけての製品。(第3展示室へ移動します。)
ドナルドダックカメラ
Herbert George Donald Duck camera
▼ドナルドダックの絵が刻まれた127フィルム用のおもちゃカメラ。1944年ころの製品と思われる。(第5展示室へ移動します。)
マーキュリーII
Universal Mercury II
▼回転式シャッターが組みこまれた扇型が印象的なハーフサイズカメラ。1945年ころの製品。(第5展示室へ移動します。)
ブローニーターゲットSix-16
Kodak BROWNIE TARGET Six-16
▼616フィルム用の,少し大柄なボックスカメラ。1946年発売。(第6展示室へ移動します。)
ローライフレックス オートマット
ROLLEIFLEX Automat
▼フィルムの厚さの変化でスタート位置を自動的に検出する,オートマット機構を搭載。二眼レフカメラのスタイルや機能を完成させた。1945年〜1949年にかけての製品。(第1展示室へ移動します。)
キヤノンIIB
Canon 2B
▼キヤノンではじめて,ライカと同じレンズマウントを採用した。1949年発売。(第4展示室へ移動します。)
1950年代前半
ブローニーホークアイ フラッシュモデル
Kodak BROWNIE HAWKEYE flash model
▼ボックスカメラとしては,最後期の製品。1950年発売。(第6展示室へ移動します。)
セミレオタックス
Showa Optical Works SEMI LEOTAX
▼二眼レフカメラ以前に一般的だったスプリングカメラ。1950年ころの製品。(第1展示室へ移動します。)
キエフIIIa
KIEV 3a
▼ソ連でContax IIIをベースにつくられたとされるカメラ。1951年ころの製品。(第4展示室へ移動します。)
レチナIa
KODAK Retina 1a
▼レンズにもシャッターにも1級品を採用した,35mm判スプリングカメラ。1951年〜1954年の製品。(第3展示室へ移動します。)
マミヤフレックスII
MAMIYAFLEX 2
▼セミオートマットやセルフコッキングなどの高機能を誇る二眼レフカメラ。1952年発売。(第1展示室へ移動します。)
ビューティフレックスV
BEAUTYFLEX V
▼前玉回転式の廉価版二眼レフカメラを代表する機種の1つ。1953年発売。(第1展示室へ移動します。)
コンタフレックス
ZEISS IKON CONTAFLEX
▼テッサー(45mm F2.8)が固定された,35mm判レンズシャッター式一眼レフカメラ。1953年発売。(第2展示室へ移動します。)
エキザクタVX
Ihagee EXAKTA VAREX VX
▼古典的なスタイル,機能の一眼レフカメラだが,最長12秒のシャッター,充実した交換ファインダーや交換レンズなど,高機能を誇る。1953年ころの製品。(第2展示室へ移動します。)
ビューティフレックスT
BEAUTYFLEX T
▼「繰出式,1秒付」で9500円。ヤシカフレックスAを上回るスペックで,二眼レフカメラに価格破壊をもたらした。1954年発売。(第1展示室へ移動します。)
リコーフレックスVIIセイコーシャラピッドつき
RICOHFLEX 7 with Seiko-Rapid
▼廉価版二眼レフカメラの代表といえるリコーフレックスに,1秒〜1/500秒の高性能シャッターを搭載したモデル。1954年発売。(第1展示室へ移動します。)
コダックステレオカメラ
KODAK STEREO CAMERA
▼左右対称のデザインが美しい,リアリスト判のステレオカメラ。1954年発売。(第6展示室へ移動します。)
マミヤシックスK(6×6,6×4.5兼用判)
MAMIYA-SIX K
▼マミヤシックス特有のバックフォーカス機構と大柄で堅牢なボディで,ピントはばっちり。日本が誇る世紀の大発明,マミヤシックスの廉価版。1954年発売。(第1展示室へ移動します。)
アサヒフレックスIa
Asahiflex 1a
▼国産初の35mm判一眼レフカメラ「アサヒフレックス」の改良型。1954年ころの製品。(第2展示室へ移動します。)
1950年代後半
ヤシカフレックスC
YASHICAFLEX C
▼繰り出し式,セミオートマットの,国産二眼レフカメラとしては標準的なスペックの製品。1955年発売。(第1展示室へ移動します。)
リコーフレックスVIIs
RICOHFLEX 7s
▼廉価版二眼レフカメラの価格破壊に,リコーフレックスは簡素なスペックとさらなる低価格で応戦。1955年発売。(第1展示室へ移動します。)
ゾルキーS
ZORKI S
▼ソ連でつくられた,ライカを模倣したカメラ。1955年〜1958年ころの製品。(第4展示室へ移動します。)
エクサ
Ihagee Exa
▼ミラーをシャッターとして利用した,コンパクトな一眼レフカメラ。1957年ころの製品。(第2展示室へ移動します。)
サボワ・ロワイエII
SITO SAVOY ROYER2
▼レンズ部がすっぽりはずれてしまう,不思議なフランス製35mm判カメラ。1957年ころの製品。(第3展示室へ移動します。)
ビトマチックI
Voigtlander VITOMATIC1
▼大きく明るいファインダー,露出計も内蔵。1958年ころの製品。(第3展示室へ移動します。)
オリンパスワイドII
OLYMPUS WIDE2
▼ワイドカメラブームをつくったオリンパスワイドの改良型。1958年ころの製品。(第3展示室へ移動します。)
ベッサマチック
Voigtlander BESSAMATIC
▼充実した交換レンズ群を誇る,レンズシャッター式一眼レフカメラ。1959年発売。(第2展示室へ移動します。)
マミヤ35S-II F2.8
MAMIYA 35S2 F2.8
▼連動距離計,ブライトフレーム入りファインダーの35mm判レンズシャッター式カメラ。1959年発売。(第3展示室へ移動します。)
マミヤ35S-II F1.9
MAMIYA 35S2 F1.9
▼マミヤ35S-II F2.8のレンズをF1.9にグレードアップ。ファインダーは,パララクス自動補正にも対応。1959年発売。(第3展示室へ移動します。)
ニコンF
Nikon F
▼この世に35mm判一眼レフは2種類ある。ニコン様とそれ以外だ。35mm判一眼レフは,ここに完成された。1959年発売。(第2展示室へ移動します。)